先願・拡大先願の判断基準



先願かどうかの判断基準

 同一発明・考案についての先願の存在により後願が特許・実用新案登録を受けることができない場合の条件を以下に挙げます。

 以下の条件をすべて満たす場合には後願は特許・実用新案登録を受けることができません。

先願および後願である特許出願・実用新案登録出願の各請求項に記載された発明・考案どうしが同一であること

 各請求項ごとに特許権や実用新案権が成立しますので、請求項に記載された個々の発明・考案どうしが同一かどうかの比較が行われます。

 発明も考案も自然法則を利用した技術的思想の創作であって本質は同じなので特許出願と実用新案登録出願との比較も行われます。

 請求項どうしの比較は発明・考案の構成が同一かどうかにより判断されます。この際、例えば、一方が方法の発明で、他方が物の発明である場合でもそれが単に表現上の差異に過ぎない場合は同一とされる可能性があります。

 後願の発明・考案が先願の発明・考案を含む上位概念の発明・考案である場合は先願と後願の発明・考案は同一とされます。一方、後願の方が下位概念である場合は原則として同一とはされません。

後願の出願日が先願の出願日よりも後であること

 新規性の判断は時分ですので、午前中に公知になった発明を午後に出願しても新規性なしとされます。一方、先後願の判断は出願日です。従って同じ日であれば朝10時の出願も夜8時の出願も対等です。同日の出願が競合する場合は話し合いをするように特許庁から命じられます(実案では無い)。

 郵便によって出願書類を特許庁へ送る場合の出願時は原則として郵便局に差し出した日時となりますが、その日時が証明できる必要がありますので郵送する場合は書留郵便や簡易書留郵便を用いるべきです。

先の出願が先願の地位を有すること

先願の地位を有さないのは次の場合です。

・先願が放棄、取り下げ、却下された場合

・拒絶査定や拒絶審決が確定した場合

・先願の出願人が特許を受ける権利を有していない場合


拡大先願かどうかの判断基準

 拡大先願の存在により後願が特許・実用新案登録を受けることが出来ない条件を以下に挙げます。

以下の条件をすべて満たす場合には後願は特許・実用新案登録を受けることができません。

先願の出願当初の明細書又は図面に記載された発明・考案と、後願の各請求項に記載された発明・考案どうしが同一であること

 拡大先願では先願は請求項だけでなく明細書および図面の記載にまで範囲がおよびます。

後願の出願日が先願の出願日よりも後であること

 これは先後願の判断の場合と同じです。但し、同日出願の場合は適用がありません。なお、分割変更出願が先願の場合は出願日は遡りません。

先願の特許掲載公報・実用新案掲載公報、公開公報が後願の出願日後に発行されていること

 拡大先願の趣旨の一つは先願の明細書等で開示された発明についての後願は新たな技術を世の中公開するものではないので権利を与えるのは妥当ではないということがありますので、この条件が必要になります。

先願と後願の発明者どうしおよび出願人どうしが同一でないこと

 これは自分が発明したもの出願したものによって拒絶されないようにするための条件です。


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